河野 貴子(こうの きこ)医師
プロフィール
川崎医科大学医学部卒業。中核病院等で約20年間皮膚科医として勤務。長年の経験と実績を生かし、美容皮膚科医の道へ。皮膚をしっかり診て、皮膚のどこで何が起こっているのかを追求してアプローチする診療スタイル。得意施術はカスタマイズ治療とレーザー治療、ボトックス、肌育注射など。プライベートでは2児の母。
「なぜニキビ痕になるのか……」とお悩みの方へ。こちらの記事では、ニキビ痕の種類や症状、原因などについて詳しく解説します。ニキビ痕が形成される理由を知れば、自分に合った対処法、スキンケアが見つかる可能性も。また、ニキビ痕の解消に効果が期待できる美容医療についてもご紹介します。消えないニキビ痕でお悩みの方は、ぜひ最後まで目を通してみてください。
ニキビ痕が形成されるメカニズム
ニキビ痕とは、ニキビの炎症が周囲の組織にダメージを与え、色素沈着や瘢痕として皮膚に残ること。肌の免疫機能が低下した状態で繰り返しニキビができ、その炎症が皮膚の奥にある真皮層や皮下組織にまでダメージを及ぼすことで、ニキビ痕が形成されます。種類によっても異なりますが、一般的にはケアを怠って放置することが、ニキビ痕を誘発する主な原因とされています。
■炎症反応とコラーゲンの損傷
ニキビ痕の形成には、炎症反応とコラーゲンの損傷が深く関わっています。ニキビが発生すると、皮膚は炎症を起こして自己防衛反応を示します。この過程で、肌の組織を支えるコラーゲンが損傷。炎症が長引くほどコラーゲンへのダメージは大きくなり、結果としてニキビ痕が残りやすくなるのです。
■皮膚の修復過程で生じる現象
表面上はニキビが治ったように見えても、皮膚の内部では治癒と修復が続いています。この回復過程において、メラニン色素の過剰生成が起こり、色素沈着が生じることがあります。これは、皮膚が傷を修復しようと新しい組織を作り出した際にメラノサイトが活性化され、通常以上のメラニン色素を生成することがあるためです。また、炎症によって血管が拡張したままの状態が続くと、赤みが残ることもあります。
ニキビ痕の種類と特徴
ニキビ痕は種類によって特徴が異なります。ニキビ痕の主な種類は、赤みを伴う紅斑や色素沈着、クレーター状の凹み、ケロイド、肥厚性瘢痕など。適切なケアや治療法を選択するには、まずそれぞれの違いを理解しておく必要があります。
■赤み(紅斑)
ニキビ痕の中でも悪目立ちをするのが赤み、いわゆる紅斑です。これは、炎症部位に毛細血管が集中し、うっ血した状態が続くことで生じます。赤みは時間とともに次第に薄くなっていきますが、炎症反応が強い場合は数ヶ月以上にわたり残ることも。1年以上消えない、治らない赤みに悩むケースも珍しくはありません。
■色素沈着
色素沈着は、ニキビの炎症を治癒・修復する過程で、メラニン色素が過剰に生成されることで起こるニキビ痕の一種です。肌の色よりも濃い茶色や赤みがかった色合いで現れ、数ヶ月~数年ほど症状が持続することもあるでしょう。肌質や年齢、日焼けといった要因によっても、色素沈着の程度や持続期間は変動します。ただし、重度の色素沈着を治す場合、自力でなんとかしようとしても消すのは困難です。クリニックで適切な治療を受けることが望ましいでしょう。
■クレーター状の凹み
毛穴部分が凹んだように見えるクレーター状のニキビ痕は、ニキビによる強い炎症が真皮層まで達し、肌細胞が損傷することで生じます。自然治癒の過程で正常に組織が修復されず、表面に窪みが残ってしまった状態です。凹みの形状はさまざまで、アイスピック型やボックスカー型、ローリング型などがあります。この種のニキビ痕は自然回復が難しく、長期間残存しやすい傾向にあります。
■ケロイド・肥厚性瘢痕
ケロイドや肥厚性瘢痕は、ニキビ痕の中でもとくに目立ちやすい症状です。一般的には、ニキビが治る過程で発生する異常や遅延によって生じます。また、いずれも赤みやかゆみを伴うことがあるため、見た目の問題だけでなく不快感も引き起こします。ケロイドや肥厚性瘢痕の発症には遺伝的要因や皮膚の特性が関係することがあり、フェイスラインなどの皮膚が伸展しやすい部位に多く見られるのが特徴です。
ニキビ痕ができる要因
ニキビ痕ができるのは、いくつかの複合的な要因が関係しています。ここでは、ニキビ痕を誘発する3つの要素について詳しくお伝えしましょう。
■過度な炎症
ニキビ痕が形成される原因の1つは、過度な炎症によるものです。通常のニキビであれば適切なケアで自然に治癒しますが、強い炎症が長引くと、皮膚の深層にまで損傷が及び、痕として残りやすくなります。ニキビを無理に潰したり、過剰に触ったりすると炎症反応を助長させるため控えましょう。症状を改善するには、適した治療を受ける必要があります。
■不適切なニキビケア
ニキビケアの方法を誤ると、痕が残りやすくなります。例えば、ニキビを刺激したり過剰に洗顔したりといった行為です。これにより皮膚の炎症が悪化し、傷痕が残る可能性が高まります。適切なニキビケアをするには、清潔さを保ちつつ優しく丁寧に行うことがポイントです。皮膚科医や美容皮膚科医のアドバイスを受けながら、自分の肌質に合ったケア方法を見つけることが、ニキビ痕の予防につながります。
■年齢や皮膚タイプ
年齢や皮膚タイプによっても、ニキビ痕の形成のしやすさは変わります。若い世代はターンオーバーの周期が短いため、比較的ニキビ痕が残りにくい傾向にありますが、年齢を重ねるにつれて皮膚の回復力が低下。「若い頃と比べて赤みや色素沈着、クレーター状のニキビ痕が消えない……」という悩みが出現しやすくなります。
中でも乾燥肌や脂性肌は、ニキビやニキビ痕を引き起こしやすい皮膚タイプ。炎症を鎮めるには、体質や症状に合わせた治療が求められます。
美容医療によるニキビ痕治療
美容医療では、ニキビ痕治療としてレーザーやケミカルピーリング、ポテンツァなどの方法が提供されています。
■レーザー治療
レーザー治療は、ニキビの痕消しに効果が期待できる美容医療の1つです。レーザー治療では、レーザーを患部に照射し、微細な点状の穴を無数に開けることで皮膚組織の修復を促します。肌が持つ創傷治癒の働きを利用した治療法で、あえてダメージを加えることで新たな細胞を作り出し、ターンオーバーの正常化に働きかけるのです。また、修復の過程でコラーゲンが生成されることで弾力やうるおいが増加。クレーターなどのニキビ痕が目立ちにくくなります。
レーザーの種類によってアプローチする層を変えられるため、症状に合わせた治療が可能ですが、施術後は一時的に赤みや腫れが生じることも。ダウンタイムを考慮する必要があることから、治療に際してはスケジュールを調整する必要があります。
■ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、ピーリング剤を肌に塗布し、古い角質を除去することで肌の状態を整える治療法。色素沈着やごく浅い凹みに効果を発揮し、明るくなめらかな肌へと導きます。また、使用する薬剤はニキビ痕の種類や程度によって調整できるため、個々の肌質や悩みに合わせたカスタマイズな治療が可能です。
重篤なダウンタイムは出ないものの、肌の状態によっては一時的に赤みを帯びたり乾燥によるヒリヒリ感が続いたりすることもあります。時間の経過とともに治まりますが、施術後は肌をこすらない、UVケアをするなど、医師の指導のもとで適したアフターケアを行うことが大切です。
■ポテンツァ
ポテンツァは、マイクロニードルで皮膚に小さな点状の穴を開け、高周波を作用させることで肌悩みにアプローチする治療法です。コラーゲン生成が肌内部の組織修復を促すため、クレーター状の凹みがなめらかになる効果が期待できます。
また、ポテンツァには薬の成分を真皮層まで届けるドラッグデリバリーシステムが搭載されており、肌トラブルに合わせた薬剤を選ぶことが可能。効率良く肌悩みを治療でき、少ない回数でも効果を実感しやすいとされています。
■おわりに
ニキビ痕にはさまざまな種類があり、症状もそれぞれ異なります。中にはセルフケアで治すのが難しいニキビ痕もありますが、美容医療の進歩により、近年ではレーザー治療やケミカルピーリング、ポテンツァなど症状に合わせた治療法を選択できるようになりました。専門医のアドバイスを受けながら自分に合ったアプローチ法を見つけることで、肌本来の美しさを取り戻せる可能性があります。ニキビ痕の治療に興味がある方は、信頼できる美容クリニックに相談してみましょう。
【治療の内容】 QスイッチNd:YAGレーザー
【当院採用機器】トライビームプレミアム
【治療期間および回数】週1回、計5~6回程度
【費用】1回 ¥21,780
【リスク・副作用等】赤み、炎症後色素沈着、瘢痕形成、色素脱失など
【使用機器について】
・トライビームプレミアムの治療には、国内未承認医薬品または医療機器を用いた施術が含まれます。
・治療に用いる医薬品および医療機器は、当クリニックの医師の判断のもと、Jeisy Medical Incより個人輸入手続きを行ったものです。
・個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報は、下記をご参照ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html
・同一成分や性能を有する他の国内承認医薬品はありません。
・万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
【治療の内容】ケミカルピーリング
【当院採用薬剤】
・マッサージピール
・ミラノリピールミラノリピール
・ミントピール
【治療期間および回数】
・マッサージピール:2~3週間に1回、計5回程度
・ミラノリピールミラノリピール:2~3週間に1回、計3~10回程度
・ミントピール:1~2週間に1回、計4~6回程度
【費用】
・顔、手、首のうち1部位:1回 ¥21,780
・首とデコルテ(ミラノリピールのみ):1回 ¥43,560
・背中(ミラノリピールのみ):1回 ¥43,560
【リスク・副作用等】
・マッサージピール:赤み、皮むけ、かさぶたなど
・ミラノリピール:痛み、赤み、かさぶた、一時的なニキビの悪化など
・ミントピール:皮むけ、赤み、腫れ、かさぶたなど
【未承認医薬品等であることについて】
・マッサージピール、ミラノリピール、ミントピールの治療には、国内未承認医薬品または医療機器を用いた施術が含まれます。
・治療に用いる医薬品および医療機器は、当クリニックの医師の判断のもと、個人輸入手続きを行ったものです。個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報は、下記をご参照ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html
・同一成分や性能を有する他の国内承認医薬品はありません。
・重大なリスク・副作用などが明らかになっていない可能性があります。
・万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
【治療の内容】マイクロニードルRF
【当院採用機器】 ポテンツァ
【治療期間および回数】4~6週間に1回、計3回程度
【費用】
・肝斑・赤み 1回:¥54,780
・ドラックデリバリー(マックーム) 1回:¥104,500
・ドラックデリバリー(ベネブ・スノーホワイト) 1回:¥93,500
【リスク・副作用等】出血、赤み、色素沈着、炎症、腫れ、一時的なニキビなど
【使用機器について】
・ポテンツァの治療には、国内未承認医薬品または医療機器を用いた施術が含まれます。
・治療に用いる医薬品および医療機器は、当クリニックの医師の判断のもと、Jeisys Medical Incより個人輸入手続きを行ったものです。個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報は、下記をご参照ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html
・同一成分や性能を有する他の国内承認医薬品はありません。
・諸外国における安全性等に係る情報。以下の認証を取得しています。
-MFDS(2019.01)
・重大なリスク・副作用などが明らかになっていない可能性があります。
・万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。